1.V1野短距離水平結合 V1野短距離水平結合によって、様々なcontextual modulationが発生する。これまでは、個々のmodulationが独立の現象として扱われてきた。しかし、短距離水平結合の本質的な機能的役割は「超解像」であることを提案し、様々なmodulationは超解像の副次的効果として現れる現象であることを実験的に示した。すなわち、短距離水平結合の機能的役割について理論的解釈を与えることにはじめて成功した。また、超解像は数学的に明確に定義できる課題であるため、今後の視覚理論研究に大きく貢献できるものと期待される。 2.盲点におけるパターン充填と工学的応用 盲点におけるパターン充填に関して計算論的考察を行い、工学的応用性も高い視覚モデルを提案した。具体的には、MatsumotoとKomatsuらによる盲点充填に関する神経生理学的知見を基礎においた。Matsumotoらは一連の実験において、(a)V1野でパターン充填がおこなわれている(b)V1におけるパターン充填には、V2細胞の介在がある(c)V1野内側方性結合と、V2を介す結合があり、それぞれの伝播速度が優位に異なることを見出した。本研究では、これらの実験結果に対する理論的解釈として、高階微分情報・変数分離・断熱仮定という全く新しい概念を取り入れ、視覚モデルを構築した。この視覚モデルはMatsumotoらの実験結果を再現できるだけではなく、Digital image inpaintingのアルゴリズムとして驚くべき工学的有効性をもつことがわかった。
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