研究概要 |
本研究の目的および本年度研究実施計画で述べたとおり,申請者が提案する非線形主成分分析を実用化するには,本手法に数学的保証を与えるための理論的な検討および手法の応用性に関する検討が重要課題であると考えられる. そこで本年度は,本研究で提案する非線形主成分分析について次の二点を検討し,それぞれにおいて新しい知見を得た.第一に申請者は,非線形主成分分析により構成される主成分軸および主成分得点の等高線に関する諸性質について理論的な検討を行った.この検討では,主成分軸と等高線が特定の条件下でとりうる開閉構造についての定理を複数示し,それらを証明した.その概要を以下の1で述べる.第二に申請者は,非線形主成分分析を用いたパターン識別の手法について提案し,その有効性を検討した.本手法では,パターンのクラスごとに非線形固有空間を構成し,それぞれの固有空間の復元誤差を比較することでパターン識別を行う.その概要を以下の2で述べる. 1.主成分軸および主成分得点の等高線に関する諸性質の検討 非線形主成分分析で張られる主成分軸上の点は,圧縮・復元写像に対して不動点になる傾向がある.そこで本検討では,主成分軸の軸上が全て不動点と仮定した場合,主成分軸は開構造をとること,および,ある主成分得点の等高線と主成分軸が一点で交わることを証明した. 2.非線形主成分分析を用いたパターン識別の検討 非線形主成分分析はデータの分布構造に則した主成分軸を構成するため,その主成分軸で張られる空間はデータに対して固有な空間(固有空間)であると考えられる,そこで,データのクラスごとに予め固有空間を構成し,クラスが未知な入カデータを各クラスの固有空間に写像してその復元誤差を比較することで,入力データがどのクラスに属するデータであるかを識別することができる.本検討では、このようなパターン識別の手法を提案し,その有効性を示した.
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