以下の3種の実験を聴覚障害者と健聴者の各10名に行い、光源色を用いた適切な情報提示について検討した。 色と文字の探索実験では、色を色、色と文字、色文字、黒文字の4種の方法で提示し、ターゲット色を6色の中から瞬時に探すタスクを与えた。その結果、両被験者群ともに色や色文字の場合に回答が速いが、聴覚障害者は黒文字の場合にも健聴者ほど遅くなく、両者で視覚認識特性が異なる可能性が示された。また両被験者群ともに赤より青に対する反応が速く、LCDモニタで白背景の場合には青の誘目性が物体色の場合ほど低くない可能性も示された。 駅空間画像における探索実験では、内照式サインを含む駅空間画像を提示し、ターゲットの方向を瞬時に回答するタスクを与えた。駅空間画像には、サイン周辺の商業表示物の色や量、サイン情報の質や量が変数となる物を選んだ。その結果、両被験者群ともにサイン内に類似色がある(使用色修正が必要)、周辺にサインと類似色で高彩度の広告がある(商業表示物との棲み分けが必要)、同じ誘導色でも内照式サインと物体色で違う色に見える(色の微修正が必要)等の場合に回答が遅かった。聴覚障害者は誘導色に付記された文字が読みにくい場合に回答が遅く、色のみでなく文字までを確認する傾向が健聴者より強いことが示された。誘導色やピクトを使用する場合にも文字の可読性に配慮する必要がある。 文字スクロールスピード調整実験では、電光文字提示装置を想定し、表示文字数、文字色、文型(一般的文章と名詞の羅列文章)を変数として文章を提示し、最も読みやすいスピードに調整するタスクを与えた。その結果、両被験者群ともに表示文宇数が少ないほど遅いスピードを好んだ。文字色や文型による顕著な差は得られなかった。聴覚障害者は大半の試行で健聴者より遅いスピードを好んだため、健聴者の感覚でスピード設定したスクロールは聴覚障害者には速すぎることも示された。
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