本年度は以下の項目を検討した。 (1)クラスタリング手法を用いて各疾患における、異なる機能の組み合わせを客観的、自動的に分類する手法の検討を行う。 (2)クラスタリング手法として、階層的凝集型クラスタリング、自己組織化マップ(SOM : Self-Organizing Map)を用いてそのクラスタリング結果の比較を行い、より臨床的に有用なクラスタリング手法の検討を行う。 (3)本手法を臨床例に対して適用することにより、腫瘍や病変部を正常部位と異なるクラスタとして客観的に分類を行う。 【まとめ】 階層的凝集型クラスタリング、自己組織化マップ(SOM)を用いて、デジタルファントム、骨軟部腫瘍症例のMRI画像、側頭葉てんかん症例のPETパラメトリック画像を対象にクラスタリングを行い、その分類結果を検討した。 階層的凝集型クラスタリングではヒープ法を適用することにより、計算時間を大幅に短縮することができた。また、腫瘍部位の面積が大きく、はっきりした機能の組み合わせの特徴を持つ骨軟部腫瘍症例に対しては、比較的良好な分類結果を得られた。 自己組織化マップでは、SOMサイズ100の大きなマップを用いることにより、側頭葉てんかん症例において、その焦点部位とその周辺に存在する特徴的な機能の組み合わせを持つ部位を分類することができた。しかし、MRI画像に対しては腫瘍を適切に分類できない症例もあった。デジタルファントムで細かいクラスタを分類できなかったこともあり、学習マップのクラスタリング法などをさらに検討する必要がある。また、計算時間が非常に長いため、これも改善していく必要がある。 全てのデータに対応できるような、確実なクラスタリング手法やパラメータは存在しなかったが、各データに適したクラスタリング手法を用いることで、特徴的な機能の組み合わせを持つ部位を分類することができる可能性が示された。
|