研究概要 |
今年度は,擬陽性部位を除去するためのアルゴリズムの検討を行い,診断精度の向上を図った.また,計算時間の短縮についても検討した。さらに、研究の総括としての学会発表,論文執筆を行った。 MRI画像における腫瘍の検出は,周囲軟部組織とのコントラストが必ずしも高くないため,熟練が要求される.本研究では,複数のMRI画像間の相関関係を客観的・自動的に構築し,腫瘍抽出を支援するシステムの開発を試みた.まず,3種類(Gd造影,T1強調,T2強調)のMRI画像の画素値から自己組織化マップの学習を行い,3種類の画像の相関に従って分布したマップを作成した.次に,このマップに対しクラスタリングを行い,事前に決めた数のクラスタに分類し,その結果を原画像に反映させ, MRIクラスタリング画像を作成した.シミュレーションでは, SOMを用いた相関関係抽出法により腫瘍を識別でき本法の妥当性が確認できた.臨床データでは,SOMを用いた相関関係抽出に加え,再分類の処理を行うことにより、10症例中8例で腫瘍を他の部位とは異なるクラスタとして分類することができた.また,検索範囲及び初期マップサイズと近傍更新の有無を変えて学習を行う高速法を提案し,その結果,演算時間を従来法の130文の1以下に短縮することができた.本手法は,解析対象範囲をあらかじめ限定することなく腫瘍の抽出が行えるため,診断支援としての実用性が高いと考えられる.また,本手法を用いて腫瘍の属するクラスタを抽出し,体積などのサイズ計測を行うことによって,病気診断や治療効果の評価につながると考えられる.
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