研究概要 |
本研究では,わが国の公共図書館において,図書館が用意する各種サービスや調べるための環境を,一般の利用者がどのように利用し,求める情報を入手しているかを明らかにすることを目的としている。今年度はその第一歩として,2005年7月から9月に公共図書館の常連利用者5名への半構造化インタビューを行い,利用者の情報探索行動を分析する際の観点としてのカテゴリを構築した。本研究のような,事前に調査の枠組みを明確にしにくい探索的な研究には,質的調査手法であり,最低限の質問内容の項目を設定し,それを出発点として適宜質問内容を修正しながら調査を進めることのできる半構造化インタビューが最適であると考え,この手法を採用した。 調査対象者への主な質問項目は,(1)調査対象者の基礎的情報,(2)普段,どのようにして図書館を利用しているか,(3)図書館でどのような探索を行っているか,(4)資料や情報を入手するまでの具体的なプロセスと使用したツールの事例,(5)レファレンスサービスやレファレンスコレクションをどのように認識しているか,と設定した。 インタビュー内容は,すべで記録し逐語録を作成した。逐語録から,利用者の情報探索に関わる箇所を切り出し,切り出した文章をコード化し,分類し,カテゴリを構築していった。インタビューは1名ずつ行い,前のインタビューによって構築されているカテゴリによって質問内容を一部修正したり,既に構築されたカテゴリを元に新たな逐語録をカテゴリ化していった。 その結果,公共図書館における利用者の情報探索を分析する観点として,「探索パターン」,「探索手段」,「情報の利用目的」,「レファレンスサービス等に対する認識」というカテゴリを構築することができた。このうち「探索パターン」には,「継続される探索」と「1回限りの探索」があり,今回事例では各個人に両者が見られたが,前者が圧倒的に多いこと等が明らかになった。
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