研究概要 |
本研究では,わが国の公共図書館において,図書館が用意する各種サービスや調べるための環境を,一般の利用者がどのように利用し,求める情報を入手しているかを明らかにすることを目的としている。2005年度には利用者の情報探索行動を解明するための観点を得るために,公共図書館の利用者への半構造化インタビューを行い,観点としてのカテゴリを構築した。今年度も引き続き同様の手法による調査を実施し質的分析を進め,カテゴリの精緻化を行った。 今年度の調査は,2006年8月から9月にサービスのための環境が整った公共図書館2館において常連利用者13名への半構造化インタビューを行った。さらにそのうち6名のインタビューの記録の質的分析を行った。 調査対象者への主な質問項目は,(1)調査対象者の基礎的情報,(2)普段,どのようにして図書館を利用しているか,(3)図書館でどのような探索を行っているか,(4)資料や情報を入手するまでの具体的なプロセスと使用したツールの事例,(5)レファレンスサービスやレファレンスコレクションをどのように認識しているか,と設定した。基本的な調査内容や手法は2005年度と同様だが,調査結果の分析を終えて不足しているカテゴリに関する具体的な発言を引き出せるよう努めた。インタビュー内容はすべて記録し逐語録を作成した。逐語録から利用者の情報探索に関わる箇所を切り出し,切り出した文章をコード化し,分類し,2005年度調査によって構築されたカテゴリを修正,補強した。 その結果,利用者がどのようにして情報を入手しているかを解明するための観点としてのカテゴリには,探索に対する認識や知識,情報ニーズの状態,探索手段,探索行動のパターンなどが得られた。さらに探索に対する認識が探索手段に影響を与えること,情報ニーズの状態が探索行動のパターンに影響を与えること等,観点間の関連も明らかになった。
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