本研究の目的は、加齢によりネガティブな影響を受ける注意制御スキルが、ゲーミングを用いた学習により改善する可能性を検証することである。 初年度である本年度は、心理物理実験により高齢者の注意制御スキルの特性を検討し、ゲーミング課題の選定およびプレ・ポスト課題の制作を行った。 先行研究より、高齢者の注意制御スキル低下の大きな要因のひとつには、神経機能の低下による全般的な処理の遅延が挙げられている。しかしながら、申請者はRSVP課題を用いた予備実験を実施し、高齢者の注意制御スキルの低下は、単純な処理の遅延のみが要因ではない可能性を提出した。すなわち、若年者にとっては注意制御に効果的な刺激が、高齢者にとっては妨害刺激となる場合があることが示された。これは、注意制御スキルが加齢により質的に変化する可能性を示唆するものであった。 本研究ではゲーミングによる学習期間の前後に、プレ・ポスト課題を実施して注意制御スキルの学習効果を測定するが、先の実験結果をもとに、注意機能の量的変化だけでなく、質的変化も確認できるようなプレ・ポスト課題を作成した。具体的には、従来の視覚探索課題・RSVP課題にプラスし、若年者であれば効果的に注意を制御できる刺激(無関連刺激の同時提示など)を加えた課題である。 次年度は、以上の課題を用いて、高齢者の注意制御スキルとその学習効果の検討へと繋げる。ゲーミングによる学習が寄与する注意機能の量的・質的変化を測定する。
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