研究概要 |
平成18年度は,(1)fMRIを用いた俳句における印象評価の脳内基盤についての研究,(2)俳句の速度感(はやい-おそい)が俳句の読みにおける時間知覚に与える影響に関する心理学的実験,の2つについて研究を進めた.(1)については現在実験中であるが,平成17年度に示したように,SD法による印象評価では俳句の印象も絵画印象と同じように「評価性」「活動性」「力量性」の3因子構造になっており,3因子間で異なる場所が脳内活動として現れることが示されつつある.またSD法の形容詞項目に対する印象の強さについても,それぞれの因子内では一貫性が認められるが,因子間では異なることが明らかになりつつある.このことは絵画刺激を用いた検討との一貫性が示され,印表評価一般の現象として明らかになると期待できる.(2)については,速度感によって時間知覚が歪むことが示されたが,極端な速度感の表れの時にはその時間知覚の歪みは生じず,むしろ緩やかな速度感印象が生起される場合に,読みのときの時間知覚の歪みを生じさせることが明らかになった.つまり,「余韻」のようにはっきりとした速度感ではなく,その曖昧さが時間知覚を歪ませるという結果になった.これらの結果は,19年度に論文化・学会発表する計画であり,5・7・5という少ない文字数の中に表現が盛り込まれた俳句という題材であっても絵画など他のメディアと同じように複雑な印象を盛り込むことが可能であり,その脳内基盤明らかになっていくものと期待できる.
|