研究概要 |
人間の認知的な特性を利用して,インタフェースがユーザから自然なふるまいを誘発する手法を提案するため,「ユーザに対して特定の感情を想起させるような情報」をインタフェースから呈示することでユーザの共感を引き出し,その共感を利用して自然なふるまいを誘発する手法の実現を目指すことが本研究の目的である. 平成17年度においては,ユーザに対して特定の感情を想起させるような情報を明らかにする認知心理実験を行った.ユーザに対して呈示する情報は,周波数と呈示時間とを変化させたビープ音のような合成音(音声情報),画面上を物体か一方向に移動する際の速度と呈示時間を変化させたアニメーション(視覚情報)の二種類である.具体的には以下の二つの実験を行った. 実験1:音声情報呈示.基本周波数の変化幅(11種類)・発話時間長(4種類)を変化させた計44種類の合成音を被験者20人に呈示し,一つの音声を呈示する毎に,その音を発しているコンピュータが,(1).驚き・疑問,(2).時間稼ぎ・躊躇.(3).肯定・同意のうち,どのような感情を持っていたのかを被験者に推定させた. 実験2:視覚情報呈示.画面上に表示された白い四角形が左から右へと移動するアニメーション計44種類(移動速度の変化幅11種類,移動時間長4種類)を実験1を経験していない被験者20人に呈示し,音声情報呈示の場合と同様に,この情報を表出しているコンピュータの状態を上記の三つの状態から推定させた. そして,これらの二つの実験の結果は,以下のようにまとめることができた. ・呈示した情報量が増加もしくは,その値を上昇させるような変化をする場合,つまり加速度が正の値をとる場合には,その情報は「疑問・驚き」と推定されていた. ・呈示した情報が変化せず,加速度の値がほぼゼロのような場合に「時間稼ぎ・躊躇」. ・呈示した情報が減少,下降するような場合,つまり加速度が負の値をとる場合には「同意・肯定」. 平成18年度においては,この実験結果を踏まえて,ユーザとインタラクションを行うような人工物からこのような情報をユーザに呈示し,呈示した情報とその際のユーザの印象評価との関係について詳しい調査を行っていく予定である.
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