研究概要 |
データから得られる推定値の信頼性を確率値として計算するために,仮説の不偏な確率値を高精度で計算するリサンプリング法の開発を目的とする.このために,(i)マルチスケール・ブートストラップ法をすでに提案している.そこでは確率分布の空間における仮説領域の境界が滑らかな曲面であることを仮定して,その曲率やデータ点までの距離といった幾何学的な議論が理論的な導出の基礎になっているので,もし境界が滑らかでない場合には特異点付近で精度が下がる.一方,(ii)多重比較法を利用した手法も以前に提案している.そこでは仮説領域が凸多面錐であることを仮定して,その頂点(特異点)における精度を保証しているが,これから離れると精度が下がることが知られている.したがって本研究では,(i) (ii)の両手法の長所を取り入れる新たな手法の開発及びその応用を目指している. 本年度は以下の点について研究を行った,(a)マルチスケール・ブートストラップ法を発展させるアルゴリズムを考案するにあたり,その基礎となる近似的に不偏な検定の理論の構築を進めた.とくに仮説領域が錐である場合など特異点を考慮するためには,曲面のテイラー展開による従来の漸近理論をそのまま適用することが出来ない.曲面が滑らかな場合,および,特異点がある場合の両方を扱うために,曲面のフーリエ変換というアイデアを得て,理論の構築を進めた.(b)その新しい理論的枠組みに基づき,特異点があっても利用可能なマルチスケール・ブートストラップ法を提案した.(c)そのアルゴリズムをソフトウエアに実装し,バイオインフォマティクスの応用(分子系統樹推定,マイクロアレイのクラスタリング)において有効性を確認した.
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