研究概要 |
平成17年度は,「一般的な統計モデルの枠組みにおいて因果的効果の推測可能条件を導出するとともに,その結果に基づいて最適計画の推測法を開発すること.加えて,最適計画を実施した際の反応変量の特徴量を導出し,その変化に関わる因果メカニズムを明らかにすること」を目的とした研究を行い,以下のような結果を得た. 1.処理変量および反応変量の観測が困難である場合において,因果効果を識別するのに十分な代用特性と共変量集合の組を選択する基準を、線形構造方程式モデルの立場から与えた.これにより,線形構造方程式モデルに基づく因果的効果の識別可能条件を大きく拡張したことになる. 2.ノンパラメトリックモデルに基づいて操作変数の識別可能条件を導出するとともに,操作変数法が規定する共分散構造と因子モデルが規定する共分散構造が同値であることを明らかにした.これにより,解決困難とされてきた操作変数の検証可能問題に対して解決法の一つを与えたことになる. 3.線形構造方程式モデルの枠組みにおいて反実仮想モデルの定式化を与えるとともに,反実仮想モデルの識別可能条件を提案した.加えて,最適計画の推測法を開発するだけでなく,最適計画を実施した際の反応変量の特徴量を導出し,その変化に関わる因果メカニズムを明らかにした.これにより,線形構造方程式モデルに基づく統計的因果推論の理論的枠組みを大きく拡大したことになる. 4.Pearl(1999)によって定義された3種類の「因果的原因確率」について,その実質科学的意味を与えるとともに,共変量調整を行った際の推定精度について明らかにした.これにより,因果的原因確率に関するデータ解析が可能となる.
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