研究概要 |
交付申請書に記載された3つの方向(背景A,背景B,背景C)からの研究が総合的に進められた.計量生物分野への有効な応用(背景Cからの展開)として,発生学領域における胎児発生スタンダード曲線を構築する有効な方法を確立した.胎児の発生過程を系統的に捉えることを目的としたスタンダードの構築はこれまで皆無に近く,重要な結果であると言える.胎児形態計測データでみられる,肺の発生過程の2群構造について,その確率的モデリングを平滑化を用いて行った.この2群構造はあまり知られていないが,形態計測においては顕著に見られた.遺伝子レベルでの研究も合わせて行う必要性があることを認識し,次年度以降の継続研究の方向性が明らかとなった.また,毛周期データの解析においても毛髪発生の確率モデルにおいて,発生確率の推定に局所適合平滑化を用いた方法が有効であることが明らかとなった.次年度以降も引き続いて研究が継続される.背景Aおよび背景Bからの展開の結果として,ノンパラメトリック多項回帰における平滑化パラメータの選択問題について有効な手法を提案し,理論的考察も行った(「研究発表」欄における論文).セミパラメトリック平滑化はノンパラメトリックな部分を含むため,常に平滑化パラメータの選択問題がつきまとう.そのため,手法の単なる提案だけには留まらず,提案手法に含まれる平滑化パラメータのデータに基づく選択アルゴリズムの提案およびその挙動の理論的考察が併せて必要であり,論文はそのような内容で構成されている.研究成果は部分的に科研費シンポジウム「統計数理の基礎理論」(17年12月20日-22日,於鹿児島大学)および科研費国際シンポジウム「バイオ統計学:最前線とそれを支える理論の展開」(18年2月13日-15日,於久山ヘルスC&Cセンター)にて講演発表した.
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