研究概要 |
これまでは、k個の正規分布N(θ_i,τ_i)(τ_iは既知)i=1,…,kの平均θ_1,…,θ_kに対してsimple order(θ_1【less than or equal】…【less than or equal】θ_k)を仮定するとき、これらの平均の最尤推定量のバイアスをブートストラップ法のようなリサンプリング法を用いて不偏に推定できるようにいくつかの方法を提案し、シミュレーションによってそれらを評価してきた。 今年度は、研究をさらに進展させるために、この問題における基本的かつ本質的な問題と思われる次の問題を考えた。いま、(1個の)正規分布N(θ,τ)(τは既知)の平均θに対して、θ【greater than or equal】0を仮定する。このとき、平均θの最尤推定量のバイアスや正規化された統計量の分布についてリサンプリング法を用いた推定方法を考える。この正規分布N(θ,τ)からの大きさnの標本をX_1,X_2,…,X_nとし、それらの標本平均をX^^-_nとすると、平均θの最も尤推定量はX^^-_n(X^^-_n【greater than or equal】0のとき),0(X^^-_n<0のとき)となる。そこでX^^-_n【greater than or equal】のときはX_1,X_2,…,X_nからリサンプリングを行い、X^^-_n<0のときはX_1-X^^-_n, X2-X^^-_n,…,X_n-X^^-_nからリサンプリングする方法を提案した。ただし、リサンプリングは通常のブートストラップ法ではなく、リサンプル時の標本の大きさをm out of n bootstrapやSubsamplingのようにある条件を満たす範囲でnより小さくする。シミュレーションによる評価では、との方法でもバイアスは真のバイアスよりも小さく推定されることは当初の問題の場合と同様であったが、漸近的には不偏に推定できる可能性が示唆された。なお、リサンプル時に標本の大きさを小さくすることの妥当性については、ほぼ理論的に説明できた。 今後は、まずこの基本問題を理論的に解明して、その結果を本来の不等式制約の下での問題に適用し、これまでに提案した方法を改良したいと考えている。
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