研究概要 |
平成18年度は,経時的に観測された繰り返し測定データに対して,統計的に解析するための1つの方法としてB-スプライン関数に基づく非線形混合効果モデルについて研究した.混合効果モデルの利点は,説明変数と目的変数の全体的な関係だけでなく,変量効果を用いることで個体差の影響を考慮に入れることが可能であり,しかも観測事典や観測回数が各個体によって異なっていてもモデルが適用できることである.しかし,一般に非線形関数を用いて混合効果モデルを構築する場合,基底関数の個数や正則化パラメータの選択が重要な問題の1つである.そこで,通常の非線形回帰モデルにおいてモデル選択基準の1つとして提案されている一般化情報量基準GICを混合効果モデルに対して導出し,一般化ベイズ型情報量規準GBICと合わせてその有効性をシミュレーションによって検証した.この研究の成果は平成18年9月と平成19年3月に開催された日本数学会でそれぞれ発表した.また,提案したモデルの臨床データへの適用例として女性ホルモンの1種であるプロゲステロンデータに当てはめ,その結果を平成18年9月に久留米大学で開催されたバイオ統計学フォーラムで報告した.この研究に関する今後の課題は,説明変数が複数ある場合のモデルの拡張と変量効果や誤差に共分数を仮定した場合の混合効果モデルへの発展等が考えられる. 一方,平成17年度に研究した正則化局所尤度法における情報量規準に基づく変数選択法については,研究協力者である九州大学大学院数理学研究院の小西貞則教授と研究打ち合わせを行い,その成果を論文にまとめ現在雑誌投稿中である.
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