平成19年度は、基底関数に基づく非線形混合効果モデルについて研究を行った。実際に経時的に観測された繰り返し測定データの特徴として、ある時点で観測された観測値とその前後の時点で観測された(同一個体の)観測値は相関があることが知られていて、同一個体内において相関を考慮したモデルを構築することが重要である。そこで、昨年度研究したB-スプライン混合効果モデルを拡張・改良し、変量効果係数に分散共分散構造を仮定した非線形混合効果モデルを構築した。さらにモデルに含まれる未知パラメータの推定をEMアルゴリズムを用いて計算し、推定に必要な基底関数の個数の選択法としてベイズアプローチに基づくモデル評価基準を提案した。提案した手法の有効性をシミュレーションによる数値実験を通して検証し、その成果を国際シンポジウムや日本数学会等で発表した。また、観測回数の多い繰り返し測定データに対しては正則化法を用いなくてもモデルが上手く機能することが分かり、正則化の必要性や関数データへの応用に関しては更なる研究が必要である。 平成17年度から19年度までの3年間の研究を通して、特に一般化情報量規準に基づく正則化局所尤度法の変数選択の研究と繰り返し測定データに基づく非線形混合効果モデル選択の研究においてそれぞれ新しいモデル選択法を提案し、その成果を論文や学会等で発表することができた。今後も理論的・実際的研究を通して更なる手法の開発と臨床データへの応用に貢献したい。
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