研究概要 |
昨年度までの解析により出芽酵母のタンパク質相互作用ネットワーク(Protein Protein Interaction Networks, PPI)は相互作用数に応じて3つの階層(低層:相互作用数が7以下、中層:相互作用数が7から40程度、高層:相互作用数が40以上)に分割されることがわかった。かかる構造を持つネットワークの障害に対する頑健性について検討した。その結果、中層での障害はクラスタリング係数の低下と平均最短経路長の向上をもたらし、高層の障害はネットワーク全体の連結性を低下させることが明らかになった。また、かかる構造を持つネットワークの出現と進化を検討するため、同志社大学工学部の三木研究室(研究協力者)の協力をうけ進化計算によるモデル化と計算機実験を行なった。出芽酵母のPPIはスケールフリー性を有する同規模のランダムグラフと比べて高いクラスタリング係数とより短い最短経路長を持つことをうけ、PPIの進化を"クラスタリング係数最大化、および最短経路長の最小化"の多目的最適化問題とモデル化し、遺伝的アルゴリズムを用いてネットワークトポロジーを探索した。その結果、最適化されたトポロジーは出芽酵母PPIと同様の階層化されたトポロジーを持つことを確認した。さらに、進化過程は連続的でははく特にクラスタリング係数の最適化においては、断続的な進化過程が生じることが確認された。以上の結果はInternational Specialized Conference of Yeast 25国際会議のワークショップでの講演に採択され、(New -omics approaches & bioinformatics, chairs Igor Stalgljar, Canada and David Ussery, Denmark)研究発表を行い、また、ネットワークの進化に関する結果については工学的な応用を加味した原著論文を発表した。
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