研究概要 |
糖脂質は,細胞間認識等の機能を持つ物質交代で生合成される物質であるが,糖脂質の研究例は乏しく,ゲノムワイド解析の技術も開発されていない.そこで本年度は,ゲノムワイド解析技術の開発とマボヤの糖脂質構造と細胞局在を決定した. (1)糖脂質構造予測システムの構築 半システムは,PSD解析データからフラグメント抽出プログラムにより抽出したフラグメント間の分子量差から構成糖を予測し,(1)この操作を親マスから順に行うことで糖鎖配列を作成する,(2)作成された糖鎖配列から還元末端糖を見出す,(3)その糖鎖配列を基に糖鎖構造を推測し,推測構造をPSD解析した場合に観測されうるフラグメントを作成し,実際の観測データとマッチングすることで,糖鎖構造予測を行う,(4)出力の順位付けは,予測に用いたフラグメントのイオン強度和の降順とした. 予測精度の検証は,計算により予測対象となる全ての構造の擬似フラグメントを作成し,それを入力データとして調べたところ,全ての予測対象構造が1位に予測され,ノイズを混入した場合でも正解構造が上位に予測されることを確認した.そこで,本システムを用いて,既知8構造に対して予測を行ったところ,全構造に対して上位(1位は7/8)に予測された. (2)マボヤHalocynthia roretz/糖脂質の組識別分布解析 我々の研究室では,脊椎動物や発生のモデル生物であるホヤのスフィンゴ糖脂質構造解析を進め,新規の糖脂質化学構造を決定してきている.マボヤH.roretziこおいては,新規酸性糖脂質と数種類の中性糖脂質の構造を決定している.本研究では,その機能解明に向け,まずはそれら糖脂質の組織別分布を,肝膵臓とそれ以外の組織(主に筋膜体等)の2つに分画して調べた.肝膵臓と筋膜体等において,弱アルカリ安定脂質画分中の総糖脂質画分の割合はそれぞれ28.1%と3.2%で,総糖脂質画分中の酸性糖脂質画分の割合は77.1%と29.2%であった.
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