研究概要 |
研究計画に基づき、「細胞遊走と分裂・分化の時間・空間的関係の基礎的解析」を行った。 1,嗅球ドパミン細胞の前駆細胞の遊走像をとらえ、形態的分化状態と比較検討した。 チロシン水酸化酵素(TH)のプロモーターにリポーター遺伝子として緑色蛍光蛋白(GFP)遺伝子を接続した遺伝子を導入した遺伝子改変動物(TH/GFP)マウスの嗅球-前脳の傍矢状断組織培養を生後2日齢および9日齢の個体を用いて施行した。バイオロジカルチャンバー付き倒立蛍光顕微鏡下で培養した組織片を用いてGFP陽性細胞(=THプロモーター活性化細胞)の移動を捉える目的で経時的な写真撮影を試みた。現在までに期待したほどの細胞遊走像が得られていないのは、組織培養片の維持環境に問題があると考えられ、実験方法を改善中である。 一方、並行して施行している固定標本の免疫組織化学染色おいてはDoublecortin等の神経芽細胞の遊走のマーカー蛋白質がTHプロモーター活性化細胞に検出されることを示した。 2,細胞遊走と細胞分裂の検討を行った。 嗅球介在神経の遊走経路(rostral migratory stream)内では細胞分裂が観察されるが、ここに存在するGFP陽性細胞は分裂するのかどうかの検討のため、ブロモデオキシウリジン(BrdU)腹腔内投与における検討を行った。GFP陽性細胞として検出される細胞はすでに分裂能は失っていることを示唆する結果が得られたが、なお他の細胞分裂の指標との比較検討が必要であると考えられた。
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