シナプトタグミンI(SytI)は神経誘発性シナプス伝達における主要なCa^<2+>センサーであり、C2AとC2B、2つのCa^<2+>結合領域を持っている。近年特にC2B領域の2つのCa^<2+>結合部位、Ca1及びCa2がシナプス伝達において重要な役割を担っていることが分かってきている。これらのシナプス伝達における役割を精査するためにそれぞれの部位に変異を持っSytIをnullバックグラウンドで発現するショウジョウバエ幼生の神経筋接合部においてシナプス伝達を解析した。神経誘発性シナプス伝達はCa1部位に変異を持つ幼生では完全に消失していた、一方Ca2部位に変異を持つ幼生では強く抑制されてはいたが完全には消失してはいなかった。Ca2部位に変異を持つ幼生では神経誘発性シナプス伝達は外液中のCa^<2+>濃度依存的にquantal content(QC)が増加し、両対数グラフにプロットしたときの傾き(n)は野生型の3.1に対して2.0であった。そこで、我々はシナプトタグミンIC2B領域のCa1部位はCa^<2+>を感受するのに不可欠であるが、Ca2部位はCa^<2+>センサーの感受性に影響を与えると結論した。また、2つのCa^<2+>結合部位のうち一つが変異していてもnが2.0であることはSytIが二量体を形成して働いていることを示唆している。 さらにこの神経誘発性シナプス伝達が完全に消失した幼生で高K^+誘発性シナプス伝達の頻度が一定の範囲ではCa^<2+>濃度依存的に低下することを明らかにした。これにより神経誘発性シナプス伝達における非同期のシナプス伝達抑制機構にもSytIが関わっている可能性を示した。 これらの結果はJ Neurophysiol.に発表されている。
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