本研究計画の目的は、行動テストバッテリー(幅広い領域をカバーした一連の行動実験)を用いた多くの共同研究を実施しつつ、基礎データの蓄積と解析を行い、実際的な疑問(実験時刻・マウスの週齢・傷の有無など)に対する答えを得て、行動テストバッテリーを改良し標準化することである。 行動テストバッテリーの標準化・効率化に必要とされている基礎データを蓄積するという目的を達成する為、最終的には網羅的行動テストバッテリーを実施し、得られた結果の大規模メタ分析を行なう。本年度の経過として、研究代表者の京都大学から九州大学への異動に伴い、実験システムの整備を基本として進めた。九州大学ユーザーサイエンス機構のテーマの中に「感性」がキーワードとして挙げられていることより、情動を中心とした行動実験装置を取得し実験システムの整備を行なった。行動実験装置として、オープンフィールドテスト(活動量・情動性)、高架十字迷路(不安様行動)、明暗選択テスト(不安様行動)、ポーソルト強制遊泳テスト(絶望・鬱様行動)、社会的行動測定テストなどを設置、整備した。 実験システムが稼動することを確認するため、代表的な抗不安作用を有するジアゼパムをマウスに投与して行動実験を行い、実験環境に問題がないことを確認した。社会に貢献するというユーザーサイエンス機構の理念に基づき、行動テストバッテリーの解析対象を遺伝子改変マウスに限定せず、食品や運動など様々な効果検出への応用を検討した。まずは、食餌由来の脂肪酸組成の違いが行動に与える影響を検出するため、動物油、植物油、魚油で構成する食餌をそれぞれ準備し、基礎検討を開始した。この研究により、食品によって情動や気分が変わるという情報が提供できると期待される。
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