哺乳類の脳形態形成に必須である分泌性タンパクReelinの下流で働く分子として、新規遺伝子mSno1を見出した。mSno1は発生初期の中枢神経系の特に未分化な神経細胞に強く発現しており、神経細胞の分化(neurogenesis)に関与している可能性がある。mSno1の脳発生過程での機能についてゼブラフィッシュを用いて調べた。モルフォリノによるノックダウン実験を行った結果、ゼブラフィッシュ中枢神経系の形態を起こした。アセチル化チューブリン抗体を用いた染色の結果、特に前脳、視蓋、小脳部分での異常が顕著であった。神経系で発現する遺伝子をマーカーに用い更に詳細に観察を行うと、細胞分化の早い段階で働く遺伝子の発現が発生が進んでも残っていたこと、ニューロン分化の成熟マーカーの発現が減弱していたことから、mSno1遺伝子群はゼブラフィッシュやその他の脊椎動物ではニューロンの分化過程で遺伝子発現のタイミングを制御している可能性が示唆された。 次にHEK293、PC12、CHO細胞でmSno1タンパクの強制発現実験を行った。mSno1の全長配列を発現させても、ごく微量のmSno1タンパクしか検出できなかったが、N末側半分を欠損した分子や、C末側30アミノ酸程度の部分を欠損させた場合に細胞核周囲に大量のmSno1を検出する事が出来た。この事は、mSno1タンパク内のこの領域がタンパクの安定化を制御している事を示唆している。さらに全長タンパクを発現させてプロテオソーム阻害剤を培養に加えた場合にもタンパクの安定化が見られた。つまりmSno1はタンパク内に自身の安定化に寄与する配列を含み、なんらかのシグナル系による修飾作用によって、タンパクが安定化し働くような機能制御機構を持っている事が示唆された。
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