神経細胞の極性形成の制御に関与すると考えられるshootinの機能解析を行った。Shootinには二つのスプライシングバリアントが存在するが、昨年度に引き続きshootin1を解析した。 1、shootin1と相互作用するタンパク質のスクリーニングと機能解析 これまでshootin1と相互作用するタンパク質は単離されていなかった。本年度、免疫沈降法によりPI3-kinase、および細胞接着タンパク質Llがshootin1と相互作用することを明らかにした。EGFPを付加したshootin1を培養細胞に発現し、単分子スペックル法で観察することで、shootin1が求心的に流動するアクチン繊維とダイナミックに相互作用することを明らかにした。神経細胞内ではshootin1はwaveと呼ばれる成長円錐様の構造に存在し、waveの移動に伴って神経突起先端へ輸送されることを見出した。アクチン重合阻害剤を培地中に添加すると、waveが発生せず、shootin1は神経突起先端に局在しなくなる。これらのことから、shootin1が神経突起先端に移動するメカニズムがアクチンにより制御されていることを示した。 2、shootin1を中心とした神経細胞の極性を確立する機構のモデル作成 Shootin1がwaveにより神経突起先端に移動すること、神経突起先端から単純拡散により細胞体に移動すること、及びshootin1の神経突起における存在量と神経突起の伸長速度に相関関係があることを明らかにした。そのため、伸長した神経突起の先端からはshootin1が失われにくく、shootin1が蓄積しやすくなることを示した。この結果、他よりも大きく伸長した神経突起がshootin1を独占して蓄積し、継続して伸長する。この現象を数値化しコンピューターモデルを作成し、神経細胞が極性を獲得し軸索が分化する様子を再現した。
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