我々はマウス小脳の発達期に特異的な発現様式を示す遺伝子としてCAPS2を同定した。CAPS2は、有芯小胞の分泌に関与するCAPS1のホモログであり、我々はCAPS2が小脳においてニューロンの生存・分化やシナプス可塑性などに重要な神経栄養因子であるBDNFの分泌に関与していることを明らかにした。 CAPS2遺伝子はヒト7番染色体長腕部にある自閉症感受性領域(AUTS1)に位置している。そこで、我々はCAPS2 K0マウスの行動解析を行った。その結果、社会性行動の異常、母性行動の異常、多動、新奇環境への適応力の低下などが観察された。また、小脳虫部VI-VII葉の低形成、プルキンエ細胞の減少が明らかになった。このことからCAPS2 KOマウスは、自閉症で報告されている様々な形質を示すことが明らかになった。そこで、ヒト自閉症患者の血中におけるCAPS2の発現を解析したところ、一部の自閉症患者特異的にCAPS2のexon3がスキップしていることを発見した。exon3をスキップした欠損型CAPS2は、輸送タンパク質であるp150^<Glued>に結合できなくなることや、シナプス部に輸送されなくなることなどが判明した。これらの結果から、我々はCAPS2の欠損はBDNFの局所的分泌パターンを乱し、これによって詳細な神経ネットワークの形成を障害するために、自閉症の発症につながることを示唆した。さらに自閉症患者特異的に、CAPS2のアミノ酸変異を起こす一塩基多型(SNP)も7ヶ所同定した。
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