研究概要 |
音声コミュニケーションに関わる障害の理解をめざし,非侵襲的脳活動計測を用いてコミュニケーション行動の表出や認知に関わる脳機能について検討した。 歌唱時の活動を捉えるため,非侵襲脳機能計測法(MEG,EEG)を用いて,発話中の感覚・運動野など複数の発生源におげる特異的な脳律動変化について検討したところ,発話中の事象関連脱同期(Event-related desynchronization:ERD)の解析から,運動野発声関連部位における半球優位性を示唆した。健常成人を対象に実施したsinging,speaking,humming,imagining課題に対するMEG反応は,いずれの発話においても,α波(8-15Hz)およびβ波(15-30Hz)帯域におけるERDが両側半球の感覚運動野発声関連部位で認められた。singing条件に対するERDは,右半球においてspeaking条件やhumming条件に対するERDよりも有意に大きいことから,喉頭調節の相違や構音の有無が反映されたと思われる。すなわち,発声関連部位のコントロールは両側から支配を受けているものの,歌のような複雑な構音や調音をともなう場合には半球間の優位性が生じるのかもしれない。この研究経過の一部は,学術誌にて公表され(臨床脳波),学会や講演等にて発表された(玉川理研シンポ国際ワークショップ,第22回日本生体磁気学会大会,第37回日本臨床神経生理学会学術大会,第49回日本小児神経学会総会)。
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