研究概要 |
APPの膜貫通部分の途中までを含むカルボキシル末端断片(CTF1-51)を細胞に発現させると、Aβ42の産生が顕著に増加する。このCTF1-51を発現する細胞をAβ42の産生モデルとし、Aβ42産生に特異的な因子の同定を試みた。CTF1-51の比較対象としてAβ40を主に産生するCTF1-52または変異型CTF1-51(147F)を利用した。これらの細胞をDIGITONINで可溶化後、Blue Native PAGEにより展開し抗Nicastrin抗体でガンマセクレターゼ複合体を検出したところバンドパターンの差を検出できなかった。この方法ではAβ42産生に特異的なタンパク質バンドの検出には到らなかった。これと平行して、Aβ42産生に特異的な因子を評価する方法として、試験管内Aβ産生系の確立を試みた。細胞から膜を分離しCHAPSOで可溶化し、その遠心上清を膜抽出液とした。これにガンマセクレターゼの直接の基質となるC99-FLAGを添加し、Aβの産生を検討した。Aβは反応時間依存的・基質濃度依存的に産生され、Aβ40,Aβ42,Aβ43,Aβ45,Aβ48,Aβ49の分子種も同定された。ガンマセクレターゼ活性はこれまで報告されている試験管内Aβ産生系と比較すると約30倍以上あり、この系はAβ産生モデルとしてメカニズムの解明や阻害剤の開発への利用が期待できる。Aβ42の産生を増強させる変異型のC99-FLAG基質を用いると、一部の変異を除いてAβ42の産生増強が再現できた。また、変異型のpresenilinにおいてもAβ42の産生増強が再現させることができた。これらの結果は、この試験管内Aβ産生系がAβ42産生を評価する手段として十分に機能することを示している。以上の成果は雑誌the Journal of Biological Chemistryで審査され、現在論文改訂中である。
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