研究概要 |
平成17年度は、神経病理学的に確定診断されたアルツハイマー病脳を収集し、その外側膝状体レベルにおける海馬の前額断組織を抽出した。家族例についてはその遺伝子変異の判明している症例を用い、APP717遺伝子変異例6例、PS-1遺伝子変異例7例となっている。弧発例は33例で、これらの標本からApo-E alleleの解析を行いE4保有数についても検索を行った。その結果は、弧発例33例のうちE4を保有しないものが7例、E4を1個保有するものが16例、E4を2個保有するものが10例であった。さらに正常対照脳は6例を得た。海馬の前額断の5μm厚に薄切された組織を、コーティングの施されたスライドグラス上にのせ、反応の阻害を防ぐためマイクロウェーブや蟻酸処理などの前処置を施した後、H-E染色や抗カスパーゼ-6抗体などによる免疫組織染色を行っている。またこれら標本の臨床データを収集し、神経所見の違いや認知症の重症度、発症年齢、罹病期間などを調査した。平成18年度以降はこれらの標本を用いて、海馬体を解剖学的基準に基づき6ヶ所の亜野(CA4,CA3,CA2,CA1,subiculum,entorhinal cortex)に分割し、各々のカスパーゼmRNAの密度を計測する。計測で得られた所見を整理し、データの統計解析を行い、認知症の重症度、発症年齢、罹病期間、遺伝子変異やApo-E E4 allele保有数と神経細胞脱落の程度、神経原線維変化の程度、カスパーゼのmRNA発現の程度との相関について検討する予定である。
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