研究概要 |
リソソーム膜蛋白LAMP-2の原発性欠損症であるDanon病は、筋鞘膜の性質を有する膜で囲まれた特異な自己貪食空胞の存在が特徴である。近年同様の空胞を有する疾患が複数存在することが明らかになり、われわれはこの一連の筋疾患群を「自己貪食空胞性ミオパチー」と呼び疾患概念の確立と分子病態の解明を目指した。 本年度は、特異な空胞の形成機序解明を目指しDanon病患者筋の病理学的解析を行った。空胞壁はAChEを発現したが神経筋接合部の機能はなく通常の筋細胞膜とは異なる由来と考えられた。調査したすべての筋鞘膜特異蛋白・細胞外マトリックス構成蛋白が空胞壁で発現し、空胞壁が完全な筋細胞膜の性質を有することを明らかにした。筋鞘膜の性質を有する空胞は、縁取り空胞を伴う筋疾患やリソソーム性糖原病など一般に自己貪食空胞が出現するとされる疾患では全く認めないことから、極めて疾患特異性が高い変化と考えられる。この空胞の数は低年齢では少なく、年齢に比例して蓄積性に増加していた。一方、リソソーム蛋白を発現する自己貪食空胞は低年齢でも多数認められた。電顕的には、自己貪食空胞周囲に基底膜を持つ空胞と持たない空胞の2種類を認めた。従って、この特異な空胞は、何らかの機序により自己貪食空胞の周囲に、時間の経過とともに二次的に形質膜が生じて形成されたものと考えられた(Sugie K, et al.2005)。さらに、先天性自己貪食空胞性ミオパチーの1家系を見出し、「自己貪食空胞性ミオパチー」の新たな疾患単位と考えられ、その臨床病理学的特徴について報告した(Yan C, Tanaka M, Sugie K, et al.2005) 今後、「自己貪食空胞性ミオパチー」の疾患概念をさらに確固たるものにするため、共通する分子病態の解明が必要であり、リソソーム系機能の解明および自己貪食カスケードの解明を行っていく。
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