平成17年度の研究計画に沿って、初代末梢グリア(シュワン細胞)とDRG神経細胞の共培養系を基礎とした以下の2点に関して実績概要を述べる。 (1)DRG神経細胞から放出される末梢神経ミエリン形成制御因子の同定 末梢神経系でのシュワン細胞によるミエリン形成過程は(1)神経軸索上でのシュワン細胞遊走期(2)細胞伸長期(3)ミエリン形成期に分けられる。何れの場合も神経細胞からの何らかの因子によりシュワン細胞の発生が制御されていることが予備実験で判明していた。申請研究においては、まず、神経細胞から放出される液性のミエリン形成制御因子の同定に関して優先的に行うため、神経細胞上の膜結合型パラクライン因子に関しては次年度も並行して行う。結果として、神経細胞の条件培地から数種類の神経栄養因子が放出されること、これらの因子を直接、座骨神経にインジェクションするとミエリン形成が促進または阻害されることが判明した。また、グリア細胞増殖因子(GGF)も多く条件培地に存在し、特に、過程(1)を促進することが分かった。しかしながら、現在同定されているGGFとは異なった分子量をもつため、完全にその実態を明らかにはできなかった。 (2)末梢神経ミエリン形成の細胞内シグナル伝達機構の解析 特に、初期ミエリン形成過程においてはRhoファミリー低分子量GTP結合蛋白質が中心的な役割をすることが予備実験において判明していたため、その制御因子の同定に着手し、2種類のシュワン細胞内のRhoファミリーグアニンヌクレオチド交換因子(活性化因子)、Tiam1(Rac1の制御)とDbs(Cdc42制御因子)を明らかにした(研究発表論文参照)。さらに、前者は、Rasによって活性が制御されるという相違した低分子量GTP結合蛋白質ネットワークを形成していること、後者は、チロシンリン酸化により活性制御を受けていることが明らかとなった。
|