本年度は遺伝性脊髄小脳失調症14型(SCA14)の原因として同定された変異γPKCがどのようなメカニズムで神経細胞死を引き起こしているかを解明する目的で、変異γPKC-GFPを培養細胞株に発現させ、その分子生物学的特性を検討し、以下の結果が得られた。 (1)変異γPKCは細胞質で凝集体を形成しやすい性質を持つ。 変異γPKC-GFPを発現するCHO細胞の多くで、変異γPKC-GFPは核の近くでの強い凝集体(massive aggregation)あるいは細胞質で点状の凝集体(dot-like aggregation)を示していた。また、変異γPKC-GFPは界面活性剤Triton X100に対する溶解性が低下していた。 (2)変異γPKCの発現により細胞死が誘発された。 変異γPKC-GFPを発現するCHO細胞では変異γPKC-GFPの発現量依存的に細胞死が引き起こされた。変異γPKCの凝集体が見られる細胞では活性化caspase-3の増大が観察されたことから、この細胞死はアポトーシスであると考えられる。 (3)変異γPKC凝集体形成によりユビキチン・プロテアソーム系の機能低下が引き起こされた。 変異γPKC-GFPの凝集体はユビキチン陽性であり、プロテアソームの集積も観察された。また、プロテアソーム感受性のGFP誘導体を用いた検討により、変異γPKC凝集体の見られる細胞ではプロテアソーム活性が低下していることが明らかとなった。 以上の結果より、SCA14において発見された変異γPKCは細胞内で凝集体を形成し、ユビキチン・プロテアソーム系の機能低下を引き起こすことにより、神経細胞死を引き起こしていることが示唆された。来年度は初代培養小脳神経細胞やトランスジェニックマウスを用いて、神経細胞死を起こすメカニズムをより詳細に検討していく予定である。
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