研究概要 |
本研究は臨床上多く観察される脳血管障害あるいは脳卒中病態を鑑み、中大脳動脈閉塞再灌流病態での代謝型グルタミン酸受容体を介するNMDA受容体チロシンリン酸化と梗塞巣形成との関連について受容体拮抗薬を用いて検討し、また受容体裏打ちタンパク質の相互作用を解析することによってNMDA受容体チロシンリン酸化の病態生理学的意義の解明と脳虚血障害防御のための新たな方法を確立すべく企画された。 本年度ははじめにラット中大脳動脈閉塞再灌流モデルで形成される梗塞巣に及ぼす代謝型グルタミン酸受容体mGluR1拮抗薬の効果を検討した。中大脳動脈閉塞5分後に左大腿静脈よりmGluR1拮抗薬LY367385(10mg/kg)を投与し、再灌流24時間目の梗塞巣体積を計測した結果、Ly367385投与群の梗塞巣体積はvehicle投与群の約40%に減少することを明らかにした。次に、中大脳動脈閉塞再灌流後の大脳皮質チロシンリン酸化タンパク質量の経時的変化を検討した。全チロシンリン酸化タンパク質量は再灌流1,4,および8時間目でcontrol群の約5.6倍、6倍、4倍に増大した。さらに、非受容体型チロシンキナーゼの活性型量を検討した結果、再灌流1,4,および8時間目でcontrol群の約2倍、2.5倍、2倍に増加することを明らかにした。以上の結果を基にして、再灌流4時間目の大脳皮質NR2Aのチロシンリン酸化を免疫沈降で検討した結果、虚血群のNR2Aチロシンリン酸化はcontrol群の約10倍に増大することを明らかにした。 以上本年度の研究結果より,中大脳動脈閉塞再灌流後の梗塞巣形成には代謝型グルタミン酸受容体mGluR1が関与し、再灌流早期に増大するSrcの活性とNR2Aのチロシンリン酸化が一部関与している可能性を示した。
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