LEA/Sendaiラット(以下Sendaiラット)は非肥満とインスリン分泌能低下を主徴とする、非肥満型糖尿病モデルラットである。量的形質遺伝子座(QTL)解析により、Sendaiラットの糖尿病関連遺伝子は第1、第3および第14染色体上にある可能性が示されている。インスリン分泌不全に起因すると考えられる耐糖能異常は、雌雄共に8週齢から観察される。そこで膵島に病理学的変化が見られない、8週齢の雄Sendaiラットおよび非糖尿病Brown Norway (BN)ラット膵島からTotal RNAを抽出後、Affymetrix社GeneChip Rat Expression Array Set 230を用いて網羅的に遺伝子発現解析を行った。その結果、Sendaiラットでは、46遺伝子が有意に増加(34遺伝子)あるいは減少(12遺伝子)していた。Ensemble genome databaseを用い、各遺伝子の染色体上の位置を調べたところ、27遺伝子については染色体領域が同定できた。そのうち、上記QTL近傍に位置した遺伝子は3遺伝子であった。現在までに、糖尿病と直接関連する遺伝子は見つかっていない。しかし、ラットはヒト、マウスに比べるとデータベースの整備が遅れており、アノテーション解析ができない遺伝子が多く存在したため、データベースの整備が進むにつれて、これらは有力な候補遺伝子になることが期待される。さらに、BNラットへの戻し交配により、第1、第3および第14染色体を個別に導入したコンジェニック系統を樹立し、ホモ接合体を作製した。糖負荷試験による耐糖能異常とQTLとの関連性を調べたが、今のところ関連性を示すデータは得られていない。今後は2つ以上のQTLをもつコンジェニック系を作製すると共に、高脂肪食投与など環境負荷を加え、糖尿病関連遺伝子座を絞り込んでいく予定である。
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