Tambaleante(tbl)マウスは、生後約2ヶ月頃から急速に小脳プルキニエ細胞を変性脱落し、歩行異常を示す小脳性運動失調モデルマウスである。本研究では、このtambaleanteマウスのプルキンエ細胞変性脱落に関する原因遺伝子を同定し、分子レベルでの病態発症メカニズムの解明を目的としている。 昨年度我々は、tbl遺伝子座領域内(1.0Mb)の候補遺伝子において、tblマウスとDWコントロールマウスとの間にアミノ酸置換を引きおこす一塩基変異を発見した。tblマウスとDWマウスはコアイソジェニック系統であることから、この一塩基置換がtblマウスの運動失調等の異常を引き起こしている可能性が考えられた。そこで今年度は、この候補遺伝子を含むBACクローンをDBF1由来の受精卵200個に顕微注入して、BACトランスジェニックマウス(Tg-BACマウス)を作成した。さらに、作成されたTg-BACマウスにtblマウスを戻し交配することで、tbl-Tg(BAC)マウスを作出した。このマウスはtblマウス由来の異常型遺伝子をホモに持ちながら、BACクローン由来の正常型遺伝子も持つ動物である。このtbl-Tg(BAC)マウスの脳組織標本および行動学的解析を行った結果、このマウスはプルキンエ細胞の変性脱落や運動失調を示さずに、正常対照マウスと何ら違いが認められなかった。この研究結果によって、同定された候補遺伝子のミスセンス変異がtbl遺伝子そのものであることを証明することができた。 現在、本研究によって得られた研究結果をまとめて、論文投稿の準備をしている。
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