本年度は2種類のDNAコンストラクション、すなわち肝臓で発現するMt-1 promoterおよびCMV-β actin promoterの下流にプロラクチン(PRL)の遺伝子を繋げ、マウスの前核期卵へマイクロインジェクションを行った。 その結果、Mt-1 promoter-PRLを持つマウス(Mt-1-PRLマウス)においてトランスジーンによる血中PRL濃度は2ng/mlであり、雌雄共に繁殖行動および妊娠、妊孕が見られ、繁殖不全には至らなかった。一方、CMV-β actin promoter-PRLを持つマウス(CMV-β actin promoter-PRLマウス)は雌雄共に、トランスジーンにより19ng/mlの血中プロラクチンを示し、繁殖不全に陥らせることに成功した。 以上のようにCMV-β actin promoter-PRLマウスは不妊状態に陥ったため、bromocriptine 400μg/headを皮下投与により内因性のPRLを抑制し、交配を試みた。その結果、雌はbromocriptineを投与しても全く性行動を示さず、妊娠に至らなかった。一方、雄は交尾行動を再開し、雌へのプラグも確認したが、現時点で妊孕に至っていない。トランスジーンからのPRLの曝露が精子の受精能に影響しているのか、あるいは他の要因による不妊であるか現在のところ不明であるが、IVFにより受精能力の検討を行うと共に、匹数を増やしその原因を解明する。 また、Mt-1 promoterの上流にCMV enhancerを付加し、6〜10ng/mlのPRL放出を持つ動物を作製する。
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