心筋組織への通電刺激によって誘発される仮想電極分極現象(Virtual Electrode Polarization : VEP)を詳細に計測するため、本年度は以下の計測・刺激装置の開発を行った。 1、動物実験とシステムの改良 心筋組織において空間的な電位勾配が心筋線維走向に対して斜めに形成される状況を再現し、かつその状態でのVEP現象を観察するため、まず基礎実験を行った。ウサギ摘出心臓標本の心室表面に2つの微小電極を、各電極を結ぶ直線が心筋線維走向に対して30〜60度の角度を持つように設定した。一方から定常刺激を印加、もう一方の電極から早期刺激を印加してVEPから開始する興奮波を高分解能の光学計測システムで計測した。その結果、Break興奮から開始する旋回興奮が消滅することなく残存し、心室頻拍/細動の成因であるスパイラルリエントリへと発展する現象を確認した。本現象をより詳細に観察するため、実験結果を元に新たに透明板に微小白金電極を複数埋め込んだ電極アレイを製作した。心臓標本に適切に設置することで、通電刺激電極に対して0度、45度、90度の角度から先行興奮伝播を正確に再現できるよう電極を配列した。 2、波面方向自動検出システムの開発 高速度エリアスキャンカメラを用いた光学計測システムを改良し、興奮波面進行方向と心筋線維走向との位置関係を画像から自動的に検出するシステムの開発を行った。具体的には画像計測を行いながら、通電刺激用の点電極近傍において画面上任意点の活動電位信号を複数同時計測し、活動電位の脱分極タイミングを元にした興奮波面の進行方向のリアルタイムな提示を可能とした。
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