心筋組織への通電刺激によって誘発される仮想電極分極現象(Virtual Electrode Polarization : VEP)から旋回性の興奮が生成されるメカニズムを明らかにするため、本年度は以下の装置の改良および動物実験を行った 1、心筋線維走向と電極位置の検討 初年度に開発した計測・刺激装置を改良し、空間的な電位勾配が心筋線維走向に対して斜め45度方向に形成された状況で微小電極アレイより点通電刺激を印加し、誘発されたVEP現象およびVEP現象からの興奮伝播を計測した。また同時に心筋線維走向に沿った長軸方向(0度)、直交する短軸方向(90度)に電位勾配を再現して通電刺激を印加して45度の結果と比較検討した。 電位勾配が0度と90度の場合はVEPから開始する興奮波の波面前面がお互いに衝突して興奮の旋回が持続しなかった。一方45度の場合は、再分極相タイミングヘ刺激印加したケースで旋回径の異なる旋回興奮が発生することがあり、そのため波面が衝突することなく旋回興奮が持続する現象を確認した。 2、先行興奮波に対する通電刺激印加タイミングの検討 心臓標本に設置した刺激電極近傍における興奮波面の波面前面の通過と波面進行方向を検出し、事前に設定した遅延時間を用いて先行興奮波の再分極相の任意のタイミングで刺激印加が可能なシステムを構築した。通電タイミングをミリセック刻みで変化させ通電刺激誘発興奮伝播現象を計測した。 3、まとめ 前項1、2の実験結果から、心臓興奮波への通電刺激においては、催細動の主要因と考えられる通電刺激誘発VEP現象から開始する旋回性の興奮波の発生を低減させることが重要であるという知見を得た。VEPからの旋回性興奮は(1)先行興奮の再分極相タイミングヘの通電、(2)心筋線維走向に対して斜め方向の空間的電位勾配が形成されている位置への通電、の2つの要因で発生しやすいことを確認した。
|