筋肉ホスホリラーゼにより酵素重合可能なアミロースプライマーの還元末端をアルキル基で修飾することによりミセルを形成させ(C12MPミセル)、ここに酵素重合を行うことで親疎水性のバランスを変化させてミセルの崩壊を誘起すること、またリン脂質との混合ミセルから酵素重合を行うと120nm程度のサイズの揃ったリン脂質リボソームを形成し得ること、さらに可溶化膜タンパク質存在下においてはこの操作を行うと膜タンパク質を再構成させ得ることなどを明らかとした。酵素によるナノ会合体の動的構造変化の制御に成功した。この酵素反応は可逆的であることから、プライマーユニットを導入することで酵素刺激による重合・分解による構造変化を誘起できるであろう。また、コレステロール置換プルランによるナノゲルを重合性基で修飾し、希薄水溶液条件下にて温度応答性ユニットであるN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)と共重合することでナノメーターサイズの疎水化多糖-温度応答性高分子ハイブリッド体を調製した。このハイブリッドはナノゲルが10粒子程度集合した半径50-100nmの複合ナノ粒子であることが確認できた。このハイブリッドナノゲルはポリNIPAMのLCST(32℃)以上に加温すると収縮し、さらに加温(-50℃)するとハイブリッドナノゲル同士が会合することが確認できた。これらの挙動はいずれも可逆であり、ポリNIPAMの置換度および粒子濃度に依存することを明らかとした。これらのことは外界からの加温を行うことでハイブリッド粒子の集合や分散の抑制が制御できること、引いては生体適合性を付与できれば生体内投与での利用の可能性を示唆している。 以上より刺激により構造変化を誘起し得る新規ナノキャリアーが創製できた。
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