研究概要 |
本研究は、再生医療を臨床として提供するため、細胞を効率的に培養し、安価に供給するための基礎技術を確立しようとするものである。本研究の特徴は、再生医療の臨床現場と細胞調整施設(Cell Processing Center)とをつなぐ培養効率化のための情報処理技術を開発するものである。 平成17年度、本研究では計画通り「細胞の増殖基礎データの蓄積とデータベース化」を行った。 名古屋大学医学部倫理委員会の承認を経た臨床研究である「自己線維芽細胞を用いた皮膚陥凹の再生医療」において得られた患者30名の線維芽細胞を培養し、その増殖率とコラーゲン産生能についての3日置きの経時的基礎データを取得し、データベース化した。現在のデータ数では、細胞増殖数の予測モデル構築には至っていないが、現在進行中のあと20名の患者の培養データを追加した時点で、Fuzzy Neural Networkを用いた細胞増殖予測モデルの構築を行う予定である。 また、もう一つの研究計画であった「新しい細胞培養機能性素材の分子設計」として、細胞の足場材料に適した4-merの接着性ペプチド(RYYR,GSKS,YIIRなど)を探索・発見し、現在論文を投稿中である。これらは、今後細胞接着性を高めた効率性の高い培養容器を設計する際、足場素材として利用できる可能性がある。 また、Fuzzy Neural Networkの最適化のための検討として、他の生物データを用いた重要変数抽出のための解析手法の確立と有用性を確立のため、他の生物データ(タンパク質の構造、ペプチドスクリーニングデータ)などを解析し、その有用性を確認しJ.Mol.Biol.に発表した。 H18年度には、これらの蓄積した情報と、生物データの解析手法が確立した情報処理技術を融合することにより細胞培養効率化のための情報処理解析手法を試みる。
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