研究概要 |
心筋細胞の興奮収縮モデルであるKyotoModelをベースに,興奮伝播と構造力学解析を統合した基本シミュレーションシステムを構築した。それを用いて、リング形状で心臓興奮伝播と収縮シミュレーションを行い,刺激場所などによる興奮伝播パターンの収縮効率への影響を考察した. 1.リング形状上の興奮伝播と構造力学を統合した収縮シミュレーション ケーブルモデルに心筋ファイバのシート構造を表す細胞長軸方向を取り入れた.興奮伝播速度は長軸方向が速く他の方向が遅くなるように設定した.有限要素法で計算される形状変化にも長軸方向上で発生するようにし,またより実心臓の動くに近づくために,内圧の影響も導入した.生理学細胞モデルの計算と有限要素解析を時間刻みごとに連成させた.心臓の働きを評価するパラメータとして,臨床などで広く使われている収縮末期駆出率(EF)を用いて,刺激場所による興奮伝播パターンの違いの収縮機能への影響をシミュレーションした. 2.興奮伝達時間の収縮機能への影響 リング形状の心臓左心室モデル上で,心室内膜への刺激場所を変えて,興奮伝播パターンによる心室収縮への影響をシミュレーションした.刺激場所は内膜の数箇所から始まって,細胞とGapjunctionを介して,内膜の違う部分と外膜へ興奮が伝播する.刺激開始場所を変化させてシミュレーションした結果,刺激場所を増やせば,心室全体に興奮が行き渡るまでの時間である興奮伝達時間が短縮され,心室のEF率が上昇する.心室の各部分を同期した興奮が心室の効率的な収縮につながることを定量的にシミュレーションすることができた.実際刺激場所を内膜一点からEndoCardium全層に広げた場合,リング形状全体への興奮伝播時間が74.9msから15.3msまで短縮され,EF率も4%上昇した.この結果は左極Blockingなど興奮伝達障害治療のシミュレーションに応用できる可能性があると考える.
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