研究課題
本研究では培養血管内皮細胞が自らに負荷される力学的刺激の力ベクトルの向きを感知する際に、センサの役割、すなわち張力などの機械的信号をタンパク質活性亢進など生化学的信号へと変換する働きを果たすと考えられるストレスファイバに着目する。ストレスファイバとは、細胞骨格成分のアクチンフィラメントが架橋タンパクにより直径200ナノメートル程度の太さに束ねられた繊維構造を有し、その両端では焦点接着斑を介して細胞外基質に物理的に拘束されてアクトミオシン収縮を示す細胞構成要素の一つである。本研究の目的は、細胞に化学処理を施してストレスファイバを抽出し、in vitro実験によりストレスファイバが有するセンサ機能を定量評価し、その結果を基に細胞が力ベクトルの向きを感知するメカニズムを検討することである。初年度において、まずストレスファイバの主成分であるアクチンをGFPにより、また両端の焦点接着班をRFP-FATによりそれぞれ蛍光標識し、細胞から分離される際の試料の形態変化を蛍光観察、及び電顕観察により詳細に調べた。その結果、細胞から取り出されたストレスファイバは収縮したために、細胞内においてストレスファイバには初期張力が発生していることが示唆された。続いてその初期張力の測定が可能なフィードバック制御機能を有した装置を倒立顕微鏡上に作製して実験を行い、初期張力はおよそ10ナノニュートンと見積もられた。また共焦点レーザー顕微鏡を用いた別の実験結果から、この初期張力が焦点接着斑、及びアクチン束を介して隣接する別のストレスファイバにより支えられていることが認められた。ストレスファイバが細胞内で有するこの微小な初期張力が力学的刺激の方向性感知に重要な役割を果たしていると考えられた。
すべて 2005
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