研究概要 |
1)ポリイミドを組み込んだ微小針型ブドウ糖センサの開発 携帯型人工膵島の一般臨床応用を達成するためには、より小型で高性能な血糖計測システムの開発が必要である。そこで、これまでに開発した従来型針型ブドウ糖センサを改良し、柔軟性および強度に優れた高分子化合物であるPolyimideをセンサの主軸に用いることで、より小型で柔軟性のある超小型針型ブドウ糖センサ(PIセンサ;直径0.3mm)の開発を行った。作製方法はPolyimideを主軸として、白金陽極を遠位部に、銀陰極を近位部に配置した過酸化水素電極の表面にブドウ糖酸化酵素を固定し、ついで制限透過膜であるポリウレタン膜にて被覆、さらにセンサの長寿命化を図るべく生体適合性膜である2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine膜を被覆しPIセンサを作製した。 2)PIセンサのin vitro特性についての検討 新たに開発したPIセンサを以下の5項目について検討した。a)水溶液中のブドウ糖濃度に対するセンサ出力の直線性、b)センサの残余電流および200mg/100mlブドウ糖水溶液に浸した際のセンサ出力、c)水溶液中ブドウ糖濃度の変化に対するセンサ出力の応答性(90%応答時間:T90%)、d)センサ出力の安定性(baseline drift)、e)皮下組織液蛋白濃度を再現した5%アルブミン添加ブドウ糖水溶液にセンサを14日間浸した際のセンサ出力の維持能力について検討した。その結果a)センサ出力の直線性は0〜500mg/l00mlの広い範囲で直線性を示した。b)残余電流は2.8nAと低値で安定しており、濃度200mg/100mlブドウ糖水溶液でのセンサ出力は58.0nAと高い出力を示した。c)T90%はブドウ糖濃度上昇時69.5秒、下降時78.5秒であり、十分に速やかな応答性を示した。d)baseline driftは4,8%と非常に安定していた。e)14日目においてもセンサ出力は開始日の97.2%であり、有意な出力の低下を認めなかった。 今回新たに開発したPIセンサは、主軸にpolyimideを用い電極を分けて配置したことで、電極の反応面積が拡大した結果、ブドウ糖センサとして優れたin vitro特性を示した。
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