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2006 年度 実績報告書

速度知覚によるVORゲイン調節のメカニズム

研究課題

研究課題/領域番号 17700401
研究機関広島市立大学

研究代表者

疋田 真一  広島市立大学, 情報科学部, 助手 (00347618)

キーワードVOR / スムーズパシュート / 眼球運動 / 視線 / 運動知覚
研究概要

頭部が突然左右に回転すると直ちに眼を頭と逆方向に回転させる反射性の眼球運動(前庭性動眼反射,VOR)が働き,空間に対する視線の向き(ゲイズ)は一定に保たれる.VORは頭部角速度を検出する内耳の半規管から外眼筋へと伝わる信号によって営まれ,きわめて高速な応答を実現している(潜時はおよそ10ms).頭部角速度信号から眼球速度信号に変換される際の利得(VORゲイン)は,一般に暗中(視覚のフィードバックが働かない状況)で頭部を回転させたときの頭部角速度に対する眼球速度の比から算出される.被験者の注意が静止物体に向けられているとき,VORゲインの値は0.9〜1.0であることが報告されており,意図しない頭部の動揺が生じてもその動きの大部分はVORによって補償される.
さて,視覚対象が運動している場合,我々は動物体と同じ方向に頭部を回転させて追跡(ゲイズパシュート)を行う.ゲイズパシュート中の眼球速度は前庭性信号(VOR系)と視覚性信号(スムーズパシュート系)から得られる眼球速度信号の線形加算により決定される.上述したようにVORは静止世界に対する視覚の安定化にはきわめて有効であるが,動物体追跡時にはむしろ目標追跡を妨げる向き(スムーズパシュートと逆向き)に作用することになる.本研究では,対象物の速度に応じてVORゲインを調節する神経機構を実験的に明らかにするため,最初に頭部静止時および能動回転時のゲイズ速度を比較した.その結果,能動回転時においてゲイズの最高速度が大幅に増加することがわかった.次に,ゲイズパシュート中に頭部に外乱を加えることによりVORゲインを推定したところ,視標運動時のVORゲインは静止時のおよそ76%であった.また,暗中で静止目標を想起しながら能動的に頭部を回転させたときのVORゲインが平均1.0であったのに対して,運動目標を想起したときのVORゲインは平均0.8で,静止目標想起時に比べて有意に低下していた.以上のことから,脳は視標運動時にVORゲインを低下させることにより目標追跡速度を高める戦略をとっており,視覚または記憶情報を通して形成された対象物の運動知覚に基づいてVORゲインを調節する神経機構の存在が示唆される.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2006

すべて 雑誌論文 (2件)

  • [雑誌論文] 眼・頭協調運動時における運動知覚によるVORの抑制2006

    • 著者名/発表者名
      平見俊明, 疋田真一, 小林康秀, 小野貴彦
    • 雑誌名

      第21回生体・生理工学シンポジウム論文集

      ページ: 301-302

  • [雑誌論文] Short-term VOR gain modulation based on motion perception during active head rotation2006

    • 著者名/発表者名
      S.Hikita et al.
    • 雑誌名

      Neuroscience2006

      ページ: 139.12

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公開日: 2008-05-08   更新日: 2016-04-21  

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