In vitroで毛細血管網を伴った厚い機能的な心筋組織を再生させることを目的にin vivoから吻合可能な動静脈(大腿動静脈の分枝である浅後腹壁動静脈)とその血流が支配する周囲の結合組織を採取し、その動静脈を培養液で還流したうえでその組織上に心筋細胞シートの重層化を行うことを試みた。まず17年度は組織培養装置(バイオリアクター)を開発するとともに培地の組成や流量に関する最適化を行った。バイオリアクターに関しては開放系で行った場合、間質から培地の漏出が起こるため静脈へ戻ってくる培地が減少してしまうという問題が生じたが、周囲をゲルで固めさらに密閉容器に入れることでこの問題を解決、生体と同様の閉鎖系を再現した。動脈圧、静脈圧および組織圧をモニタしながら流量を最適化した結果、心筋細胞シート重層化後24時間以上還流培養することが可能となった。また24時間の時点で重層化した心筋組織は同期して拍動していた。動脈側と静脈側の酸素分圧、血糖、乳酸濃度を測定、比較したところ酸素分圧および血糖値は低下し乳酸値が上昇していた。これらの結果は生体と同様に動脈から注入された培地により重層化心筋細胞シートを含む組織に酸素と栄養が供給され、老廃物が静脈から排出されたことを意味し、重層化心筋シート内の血管網の再構築を示唆するものであった。今後、重層化心筋シート内の血管網新生過程を解析するとともに長期培養にむけたバイオリアクターでの培養条件の最適化を行う。またバイオリアクター内で重層化心筋シートの反復移植を行うことでin vitroでより厚い心筋組織の再生を試みる。
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