研究概要 |
まず水中液晶を作製するのに適した液晶材料の選定を行った.電界応答性の高いサーモトロピック液晶は一般に的に温度依存性も高いものが多いので,哺乳類の体温37℃で安定なネマチック液晶状態を持ち,かつ入手が容易な材料をえらび,水中での薄膜化を調べた.その結果,37℃で安定な水中液晶膜を作製することが出来る液晶材料が見つかった. つぎに,純水中の液晶薄膜に,水中のプラチナ電極で電界を印加し,電気光学応答特性を調べた.光源にはHe-Neレーザを使用し,クロスニコル光学系を用いて復屈折の変化を観測した結果,良好な電気光学応答が観測され,水中でもネマチック液晶相が存在し,電気光学効果が観測されることを明らかとした. そして,その薄膜を細胞培養液中に移し,培養液中でも安定に存在することを確認したのちに,液晶薄膜上でラットの線維芽細胞の培養を試みた.その結果,市販の液晶をそのまま利用すると細胞が死滅することがわかった.そこで,市販の液晶を純水で超音波洗浄し,水溶性不純物を十分に取り除いた後に,液晶薄膜を作製し,その上で細胞を培養したところ,細胞の増殖が確認された.このことから,液晶材料自体の毒性は強くないが,市販の液晶材料には毒性の強い水溶性不純物が多く含まれていることが明らかとなった.実験により増殖曲線を作成し,液晶薄膜上での細胞培養の増殖特性を定量的に調べたところ,液晶のないデッシュ上での純粋培養よりも数割程度低い値で増殖することが明らかとなった.
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