マウスやラットなどの小動物を対象にしたPETによる分子イメージングは、ポストゲノム研究を推進する有力な手法として期待を集めているが、微量生体内物質の空間分布および時間変化を追跡するダイナミックイメージングを実現するためには、装置感度が十分に高いPET装置が不可欠である。しかし、従来技術では、結晶素子の厚みによって斜め入射のγ線に対する検出位置精度が劣化するため、分解能と感度を共に高めることはできない。これを解決すべく我々は、検出素子の深さ方向のγ線相互作用位置を計測する新たな3次元放射線検出器(DOI検出器)を開発している。そこで本研究では、DOI検出器を応用して、高解像度と高感度を共に実現する新たな小動物用PET装置の実現を目指し、(1)小動物用DOI-PET検出器の試作および性能評価、(2)高精度画像再構成手法の開発を行った。 1.小動物用DOI-PET検出器の試作および性能評価 1.4mm角4.5mm厚のLYSO結晶を12×12×4段に組み上げた結晶ブロックの底面に、位置弁別型の光電子増倍管(PMT)を光学結合させ、検出器ブロックを試作した。ガンマ線を検出した結晶位置は、複数のPMT信号から計算される重心点により判定されるが、層によって重心点が変化ように、結晶間に挿入する反射膜のパターンを層毎に変えている。そして、各結晶位置が正しく弁別できること、4層構造が時間分解能やエネルギ分解能を劣化させないことを実験的に示した。 2.高精度画像再構成手法の開発 高精度なイメージングを現実的な計算時間で実現するために、近似化した観測モデルを提案し、精度を維持したまま約1/200の計算時間削減が可能であることを示した。一方、検出器の分解能性能を劣化させるガンマ線の検出器内散乱については、再構成像の画質を最大化する観点から、結晶位置と対応づけするPMT信号の重心点の範囲を最適化する方法を開発した。
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