マウスやラットなどの小動物を対象にしたPETによる分子イメージングは、ポストゲノム研究を推進する有力な手法として期待を集めているが、微量生体内物質の空間分布および時間変化を追跡するダイナミックイメージングを実現するためには、装置感度が十分に高いPET装置が不可欠である。しかし従来技術では、結晶素子の厚みによって斜め入射のγ線に対する検出位置精度が劣化するため、分解能と感度を共に高めることはできない。これを解決すべく我々は、検出素子の深さ方向のγ線相互作用位置を計測する新たな3次元放射線検出器(DOI検出器)を開発している。そこで本研究では、DOI検出器を応用して、高分解能と高感度を共に実現する新たな小動物用PET装置の実現を目指し、昨年度実施した(1)小動物用DOI-PET検出器の試作および性能評価、(2)高精度画像再構成手法の開発に引き続いて、(3)イメージングシミュレーションによる装置設計、(4)プロトタイプシステムの開発および性能評価を行った。 3.イメージングシミュレーションによる装置設計 DOI検出器は、自由な検出器配置を可能にする。そこで、結晶素子を小型化して分解能を高め、結晶素子を多層に配置すると共に検出器リング径を小さくし体軸方向に長くすることで、立体角を高め装置感度の向上を図った。具体的には、1.4mm角、4.5mm長さのLYSO結晶素子を32×32×4層に並べた検出器ブロックを6個×2リングに配置する構成とした(検出器リング直径88mm、体軸方向視野103mm)。 4.プロトタイプシステムの開発および性能評価 1/4サイズ(32×8×4層配列)の検出器ブロックを2個試作し、1ペアのプロトタイプシステムを構築した。そして、棒状線源を測定し、FBP法により画像再構成を行った結果、1.5mm(視野中央)〜2.0mm(視野周辺部、市販装置は4.0mm以上)の優れた分解能を実証した。
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