本研究はMRI内と近傍で数十μmの微小な機械的マニピュレーションを行なうMRI内生体組織マイクロマニピュレーションの研究である。昨年度はMRIに対して電磁的適合性を有し、かつマイクロの操作が可能なマニピュレータとコントローラを製作した。本年度はMRI対応性の評価とコンピュータによる統合を行なった。 はじめに、マニピュレータとMRIの相互の影響を定量的に評価した。マニピュレータの有無で同じファントム(信号源)を撮影したときの画像で評価した。当初計画と異なり、低分解能(1mm)の臨床用MRIではなく、本マニピュレータの使用条件に近い高分解能(0.4mm)の実験用MRIを使用した。その結果、マニピュレータの存在による画像の歪は全く見られなかった。一方でS/N比は約半分(11.3から6.6)に低下した。主要な構造物は分かる画質ではあるが、今後の改良が求められる。またMRIの撮影によってマニピュレータのセンサに影響があることがオシロスコープで認められたが、撮影中にマニピュレータを動かす必要はないので大きな問題にはならない。 次に、MRI対応マニピュレータコントローラを制御するコンピュータシステムを構築した。この制御コンピュータはリアルタイムOS(RT-LINUX)により2msec間隔でPID制御された。また、当初計画にはないがシステムの完成度を上げるために、マン-マシンインターフェイスとなるマスタアーム(ジョイスティック)を製作した。従来のキーボードによる入力と異なり、これによって操作者は直感的な入力が可能なる。 また、MRI画像と顕微鏡などの実体画像を統合する上でお互いの座標系の統合(レジストレーション)を行なう必要がある。その精度について従来のMRI対応マニピュレータを用いて検討を行なった。その結果、介在する座標系を排除することで高い精度が得られること明らかになった。
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