術前に取得した3次元モデルを用い、光学式3次元位置センサを用いて術野を撮影するカメラのモニターの実画像にリアルタイム重畳表示するナビゲーション手術を小児の臨床例に試みた。症例は1才の女児で肝右葉の前後区域にまたがる肝芽腫であり、化学療法を2クール施行後、肝右葉切除を行った。手術前に撮影したMD-CTを用いた3次元画像により腫瘍の位置、脈管の走行、肝切除後の残肝容量が確認可能であったため血管造影は行わなかった。術中実画像にリアルタイム重畳表示するシステムは、光学式3次元位置計測装置、コンピュータ、光学式マーカ付きCCDカメラを使用した。全身麻酔導入後に術前のCT画像との位置あわせを体表から剣状突起と両側の肋骨弓下で行い、動脈と腫瘍の重畳表示を行った。次に開腹し肝表面が露出した後に腫瘍の重畳表示を行い肝後区域S6・S7を主座とする腫瘍の位置を確認した。肝門部の動脈処理を行う際にも3次元の動脈走行の重畳表示を行い、右肝動脈の処理の参考にした。最後に右肝動脈・右肝管・門脈右枝を完全に処理したのちに腫瘍の重畳表示を行い切除範囲に腫瘍が含まれることを確認した。 今回のナビゲーションシステムは精度検証が必要であり、Registrationの際に生じる誤差のほかに、肝臓の呼吸性移動や変形が少なからず影響する可能性がある。しかしながら厳密な精度が求められる場合でなくても、腫瘍および脈管構造の可視化を手術操作前後の確認に用いることで小児領域、特に幼児でも十分有用であると考えられた。 新生児症例にたいしても3次元モデルを作成し、術前に手術シミュレーションを行うことは可能であったが、気腹などによる変形が強く、リアルタイムナビゲーションは技術的に困難であり今後、呼吸性移動・臓器変形・気腹による変形を含めたシミュレーションが必要と考えられた。
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