研究概要 |
血液粘性の上昇は赤血球の凝集現象によって引き起こされることが知られている.これまでの採血による測定では患者への負担だけでなく,実際の人体内の赤血球凝集体直径がしばしば注射針の内径を上回ることから、被検体の状態を変容させる恐れがある.日常的なセルフチェックが望ましい指標であることからも、非侵襲的な測定が実現されることが強く望まれる。 光学的見地から見た場合,赤血球の凝集は粒径の増大,血液は様々な粒径の赤血球の溶液と捉えることができる.よって本研究ではまず,透明溶液中の赤血球に可視域レーザ光を照射した際の空間的光散乱分布を得るための2次元FDTDシミュレーションを行った.溶液中の粒子数を一定とし、凝集度を様々に変化させた場合の散乱光分布を計算した。その結果,凝集度の変化による散乱パターンの変化が確認できた.また、散乱光分布測定実験を行い本手法の蓋然性の確認を行った。様々な粒径を模擬したパターンを紙に印刷したものを被検体として用意し、それを自動ステージ上に貼り付けて固定し、ある一定の速度で等速移動させた。その被検体に対して、光源として赤色半導体レーザ光を斜めに照射した。散乱光を検知するセンサとしてはフォトダイオードを空間的に数点配置し、散乱光分布を測定した。この結果、粒径の変化によって散乱光の強度分布だけでなくスペクトルパターンにも特徴的な変化が現れることがわかった。凝集度分布のみからの凝集度の推定は、実際は困難であることが推測され、スペクトル分布を加味した推定アルゴリズムを構築することが必要であると考えられた。
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