左半側空間無視(USN)に対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の効果を検討した。【対象】脳卒中患者8例(男性4例、脳梗塞6例、平均発症6.5ヶ月、行動性無視検査(BIT)通常平均67、MMSE/HDS-R平均18.7。【rTMS】Magstim Rapid System 1000/50(Magstim社製)を用い、左頭頂葉後部(P5)直上を、運動閾値の95%強度、1Hz、1回900発で、週3回2週間(合計6回)施行。施行中はMEB-9104(日本光電社製)で、左短母指外転筋運動誘発電位、脳波(C4〜右耳朶)を記録。対象を実刺激群とSham刺激に無作為に割り付け、Sham刺激群では、2週間のSham刺激後に実刺激を希望した場合には、実刺激を実施した。【評価】BIT、MMSE/HDS-R、片麻痺、日常生活自立度を、介入2週間前、直前、直後、2、4週間後に、また脳血流シンチ(^<123I>-IMP定量)を介入2週間前、2週間後に評価した。平行して理学・作業療法を週5日実施。【結果】8例中4例が脱落(水頭症・頭蓋形成部感染・本人の中止希望・痙攣発作)。【症例1】59歳男性、脳梗塞発症後半年、BIT通常68。HDS-R21。BITは刺激2週間後までBIT通常100と改善したが、4週間後に70と低下。【症例2】61歳女性、脳梗塞発症後半年、BIT通常35、MMSE23、左同名半盲あり。BITは刺激4週間後まで改善傾向(83点)であった。【症例3】72歳男性、脳塞栓発症後7ヶ月。BIT通常23、MMSE14。刺激後、MMSE19と改善したが、BITには大きな変化を認めず。【症例4】76歳男性、脳梗塞発症後8ヶ月、BIT通常22、MMSE14。刺激後MMSE16となったがBITに変化を認めず。いずれの症例においても、片麻痺、日常生活自立度、脳血流シンチには変化がみられなかった。【考察】非損傷半球頭頂葉へのrTMSは、USNや認知障害を改善する可能性が示唆されたが、症例により効果に差がみられた。
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